PEOPLE & REPORT

自習席やOB·OGの手厚いサポート。合格への環境がここには揃っている

修了生 Y.Tさん

法曹として活躍する修了生たち
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ASEANに進出する国内企業を法律でサポート

5年前にシンガポールとタイに住んでいる日本人弁護士二人とともに『ONEASIALAWYERS』という事務所を設立しました。業務の内容としましては国内やASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に、企業に関する訴訟、紛争の解決、M&A(企業合併や買収)、株式を上場する際の企業支援、株主総会の準備、パワハラ・セクハラ等の法律相談などの仕事をしています。国内・海外の業務割合で言いますと国内6:海外4、クライアントはすべて日本企業です。

昨今は、日本企業が海外進出するケースが増えています。特にASEANへの期待は大きいと感じます。しかし実際に進出するとなると、そこには規制があり、知らないといけないことがたくさんあります。例えば、外資規制といって、外国法人(日本企業)が国内法人(現地企業)の株を一定数以上持つことができません。そういうルールチェックをしてクライアントに伝えたり、現地での企業買収や合弁会社を作るときなどにお手伝いをさせていただいています。最近は新型コロナウイルスの影響で落ち着いていますが、ベトナムヘの進出は非常に多くなっています。

弁護士になる前と後では、仕事に対するイメージはほとんど変わりありません。ただ、一番違ったのは、仕事の量が非常に多いということでした。夜の9時くらいまでは仕事をするのだろうとは思っていましたが、時には深夜まで及ぶこともありました。しかし、仕事の内容にやりがいがあり、自分の実力がついていると感じていたので、頑張ろうという思いは強かったです。

設立したばかりの会社の社長や個人の方に関する案件で、大きな失敗を経験したことがあります。クライアントとのコミュニケーション不足が原因だったのですが、たとえ本人が話したがらない事柄であっても、その内容を私たちが知らないと解決策が見つかりません。どのように本音を引き出すのか、どうやって依頼者との距離感を縮めていくのかは、弁護士にとって大切な仕事の一つであると実感しました。単に法律用語を並べるだけではなく、寄り添うことが重要なのですね。クライアントは一人一人違うので、こればかりはいまだに難しい部分です。

質問に対する回答の遅れでクライアントにご迷惑をかけたこともありました。投げかけられた質問に対してその場では判断がつかず、「のちほどメールで回答します」と言ったまま、先延ばしにしてしまいました。わからなかったら、『調べる・聞く』を徹底する。これが重要だと改めて感じました。

夢はアジア初の世界的弁護士事務所にすること

弁護士としてやりがいを感じるのは、訴訟で納得のいく判決をいただけたときや、M&Aが無事に成立したときです。裁判は、法律だけで決まるものではなく、人である裁判官が判断するものなので、勝つ確率の見立てを立てていても、判決を聞くまではわかりません。だからこそ良い結果が出るとうれしいです。余談ですが、裁判に関しまして1つだけ願掛けをしておりまして、判決は午後1時10分に出されるケースが多く、お昼ご飯を食べないで臨むと、納得いく結果を得られることが多いです。

M&Aが終了したときは、うれしいというよりかは安心するといった気持ちのほうが強いです。案件にもよるのですが、M&Aは短期間で成立させることが多い。企業買収を3カ月で終わらせたいという要望があったら、まずは2、3週間で相手企業の財務状況を調べます。その後に行われる買収金額の設定や従業員の雇用問題などの交渉を考えますと、財務調査はこのくらいの期間で済まさなくてはなりません。売上、資産、人件費など、確認すべき内容は膨大にありますから、どうしても忙しくなります。財務チェックはミスが許されませんので、相当神経を使います。だからこそ無事にM&Aが成立すると、全身の力が抜けるほど安堵します。

弁護士としての業務以外にも、自分の事務所の人事やアソシェイトと呼ばれる後輩たちの指導・教育なども担当しています。私たちの仕事は人がいて成り立つので、人材はとても重要です。実績のある方に中途採用で入ってもらうのもそうなのですが、やはり1年目から生え抜きとして育っていってもらうのが理想です。採用した<なる人というのは、チームワークに加わることができる方。私たちの事務所は1つの案件に対して複数人のチームで動きますので、自分の範囲はここまでという決まった線引きがありません。私自身も5人の弁護士といっしょに案件に当たっています。チーム制というのを理解してもらい、案件の盲点や見逃しについて積極的に相互フォローしてくれる人が望ましいです。もちろん1年目の新人さんに高いクオリティは求めませんが。

今後の目標としましては、日本初の世界的な法律事務所を作ることです。今、世界的に大きい法律事務所はアメリカやヨーロッパ系ばかりで、アジア系がありません。日本とASEANを拠点として、南アジアヘ向かい、アフリカヘ渡って、最後にヨーロッパ、アメリカに進出したい。夢物語に感じられるかもしれませんが、考えると胸が躍ります。そのためには、まだまだ足元を固める必要があると思っています。

その一番の課題といえば、やはり人材でしょう。おかげさまでうちの事務所は今、依頼案件が増えています。しかしその反面、人手が足りない状況となっています。だからといって仕事自体のサービスの質を下げてしまっては、お客様は離れてしまいます。成長速度に合った人材の確保はとても大事で、通年で面接をしていますし、インターンの受け入れも行っています。良い人材がいれば、こちらから声掛けもしています。

自習席やOB・OGの手厚いサポート。合格への環境がここには揃っている

そもそも法曹を目指したのは、大学3年時のゼミがきっかけでした。ちょうどその頃は新司法試験制度が始まるタイミング。それまで弁護士になるうとは一度も思っておらず、一般企業を志望していました。しかし、ゼミの中で弁護士の仕事内容や試験制度を知り、弁護士という職業をより身近に感じたことで一度司法試験を受験してみたいという思いに至りました。そうして法政大学法学部卒業後に法政大学法科大学院へと進学しました。

授業は少人数制ですので、座学に終始するのではなく、先生が学生に対して質問します。答えられないと恥ずかしい。その気持ちが勉強する原動力になっていたのも事実です。しかし、1年目の前期にただ勉強すればいいというわけではないということを知りました。民法の論文試験で答案用紙を返却されるときに、先生から「このままでは司法試験に合格できないよ」と言われました。また、「論文は論点を書くのではなく、問題に対する回答を書きなさい。文章に対する評価だから、わかりやすい日本語で短く端的に書かないと駄目ですよ」と教えられました。そこからは文章を書く勉強を始めました。ひたすら法律の論文を書いては、友人に読んでもらい、わかりづらい箇所にマーカーを引いてもらいました。いつの間にか主語が変わったり、一文が長かったり、そういった癖を直す訓練をしたからこそ、1回で司法試験に合格したと今でも思っています。文章を書く訓練は今でも仕事上で役立っていますね。

その他の勉強につきましては、普段の授業、教科書、六法全書、過去の判例集だけです。参考書を使ったり、予備校といわれるところには通いませんでした。その代わり、OB·OGの方がゼミを開いてくださっていたので、先輩方に答案を見てもらうなど、大変協力していただきました。先生方はもちろん、OB·OGとも距離が近く、親身になってサポートしていただける環境も、法政大学法科大学院の魅力の1つですね。

今年度入学された方、今入学を考えている方にお伝えしたいのは、法政大学法科大学院は司法試験のために勉強するには理想的な場所ということです。合格に向けての学習カリキュラムはもちろんのこと、実際の現場に即した臨床教育も充実しています。OB·OGのバックアップも手厚いです。また、自習席(キャレル)が一人につき一机用意されていることは本当に魅力的で、自宅の勉強机のように使うことができます。校舎は法科大学院生専用で、他の学生は入れません。学食を利用したければ、学部へ行けばいい。同じ目標を持った仲間たちとの交流も剌激になりました。

最後になりますが、法曹を目指すみなさんには、絶対に司法試験に受かってほしいと思います。一時期、弁護士が増えたことで仕事自体が減っていくのではないかと言われていましたが、起業する方が増えたり、働き方改革に伴う法律相談など、社会が多様化するにつれて弁護士の仕事はむしろ増加しています。仕事のやり方も、私たちのようにチームとして動くのか、または個人事務所を設立して一人でやっていくのか、自分自身で選ぶことができます。とてもやりがいがのある仕事ですので、早く試験に合格して、現場で活躍してほしいと思います。

Y.Tさん プロフィール
  • 弁護士法人ONE ASIA LAWYEARS 代表パートナー
  • 2006年:法政大学法学部卒業
  • 2008年:法政大学法科大学院修了
  • 2008年:司法試験合格 62期生司法修習生
  • 2009年:弁護士登録(第二東京弁護士会所属) / 村田・若槻法律事務所入所
  • 2015年:村田・若槻法律事務所パートナー就任
  • 2017年:ONE ASIA LAWYEARS東京オフィスのパートナーとして入所