PEOPLE & REPORT

総務省行政不服審査会の委員を務めてー法科大学院教授 交告尚史(行政法担当)ー

活動レポート
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 総務省行政不服審査会の委員を務めています。行政庁の処分に不服のある人から審査請求を受けた審査庁が裁決を行う前に諮問をして来られますので、それに対して答申をするのが審査会の仕事です。委員の任期は3年、私は2期目で通算5年目に入っています。審査会の委員は9人、3人ずつの3部会制です。会議が開かれるのは基本的に週1回です。1人でも休むと流会になりますので、風邪もひけません。事件記録を読むのが結構たいへんですね。長いものは1000頁を超えますから。

 行政に対する不服申立ての仕組みは昔からあったのですが、平成26年に行政不服審査法が全部改正されました。国民にもっと活用してもらうためです。行政不服審査裁決・答申検索データベースを一度覗いてみて下さい。国の行政不服審査会だけでなく、市町村や都道府県が設置する行政不服審査会の裁決や答申もたくさん出ています。皆さんの故郷ではどういうことが問題になっているか調べてご覧になるとよいと思います。

 行政法の講義で学ぶ有名な判例の一つに、労災就学援護費事件判決(最判平成15年9月4日)があります。私はこれをもう何十年と教えてきたわけですが、本当のことを言いますと、珍しい事件だなあと思っていました。ところが、行政不服審査会にはこの案件が頻繁に上がってきます。裁判にならないというだけで、あちらでもこちらでも問題になっているのです。それで私は大いに勉強しました。その成果を講義に反映させようと努力していますが、教員生活が残り少なくなってきました。これはどうにもしようがありません。